最近人気の記事

2014年9月5日金曜日

東アジア地域での安全保障環境の現状


実際、東アジア地域の安全保障環境が厳しさを増しているのでしょうか。日本の安全保障の現状としてどのような情勢判断を下すことができるのでしょうか。
今回は、いくつかの報告書や先行研究から、こうした論点に関する部分を紹介したいと思います。

まず東アジア地域に権益を持つ主要な国家の勢力は次の通りです。

アメリカ 陸上勢力59万名、海上勢力613.9万トン(1030隻)、航空勢力3498機
中国 陸上勢力160万名、海上勢力142.3万トン(892隻)、航空勢力2582機
ロシア 陸上勢力29万名、海上勢力207万トン(976隻)、航空勢力1555機
日本 陸上勢力14万名、海上勢力45.3万トン(139隻)、航空勢力420機 (防衛省2014: 375)

東アジア地域ではこれら以外にも102万名の陸上勢力を有する北朝鮮、52万名の陸上勢力を有する韓国などがあり、各国が展開する軍事要員を合算した規模だけで評価すれば、世界でも特に高い密度で部隊が展開されていると言えます。

このような地域の特性は東アジア情勢で緊張が緩和されない場合の地政学的な危険を示唆していますが、それと同時に各国が大規模な軍事力で相互に抑止し合うために、戦略的安定性は高いことも意味しています。

ある研究報告で東アジアで武力衝突が発生する公算は少なくとも2030年までは低いレベルとして判断されたことも、各国が保有する軍事力の規模が戦略的安定性を促進する因果関係が認められているためです(Swaine et al. 2013)。

もし中国が領土や勢力圏の拡張を企図するとしても確実な勝利が得られるだけの局地的な軍事的優勢を準備することが必要です。現状の勢力関係で中国がそれだけの水準に達しているとは言えません。
したがって、東アジア地域で直ちに武力紛争の危険を考慮する必要はそれほど高くないと考えられます。

しかしながら、東アジア地域で緊張がやや高まる傾向性があることは確かです。
最近の防衛研究所の報告書では安全保障のジレンマが顕在化していることや、北朝鮮での政権交代、中国の勢力拡大と民族主義の高揚などが危険な要因として指摘されています(防衛省防衛研究所2014: 26-29)。

中国の台頭以上に重大な影響を及ぼす可能性がある要因として考えられるのが、東アジア地域におけるアメリカの勢力後退です。

第二次オバマ政権は声明の中ではアジアへの回帰として「リバランス」を掲げていますが、実際の動向を見たところ、東アジア地域においてアメリカの具体的な勢力の増勢を行うというわけではありません。

(Berteau and Green 2012: 14)
この地図は東アジア地域の安全保障環境で特に紛争が進行中の地域×で表し、また領土紛争が進行中の地域を緑色の記号、災害地域を黄色の記号で表現したものです。

この地図で明確に示されているのは、中国は南シナ海と東シナ海での局地的優勢を確立することを許せば、西太平洋におけるアメリカの領土であるグアムも脅威に晒されることです。

しかし、アメリカでは国防予算の削減が進められています。
2011年に成立した予算管理法に基づき、議会は2013年会計年度で国防省の人件費を除く予算科目の全てで予算を強制的に削減しました。

その影響は多方面に及びましたが、海軍艦艇の海外展開への影響に限ると、中東に向かうハリー・S・トルーマン空母打撃群の出航が2月から7月に延期され、それ以外に海外展開する海軍の艦艇の数は105隻から95隻に減少しています(防衛省防衛研究所 2014: 237)。

このような軍事情勢が今後変わらないなら、アメリカは宥和を通じて中国の勢力拡大を容認する路線を選択する公算は大きくなります。
台頭する中国と敵対せずアメリカの地域的権益を確保し続けるためには米中関係の戦略的安定性が欠かせません。これは日本の安全保障にとって重大な意味を持つ可能性です。

KT

参考文献
防衛省『日本の防衛』防衛省、2014年
防衛省防衛研究所編『東アジア戦略概観2014』防衛省防衛研究所、2014年
Swaine, M. D., Mochizuki, M. M., Brown, M. L., Giarra, P. S., Paal, D. H., Odell, R. E., Lu, R., Palmer, O., and Ren, X. 2013. China's Military and the U.S.-Japan Alliance in 2030: A Strategic Net Assessment, Washington, DC: Carnegie Endowment for International Peace.
Berteau, D. J., and Green, M. J., eds. 2013. U.S. Force Posture Strategy in the Asia Pacific Region: An Independent Assessment, Washington, DC: Center for Strategic and International Studies.
Swaine, M. D., Tellis, A. J. 2000. Interpreting China's Grand Strategy: Past, Present, and Future, Santa Monica: RAND.

0 件のコメント:

コメントを投稿