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2014年9月26日金曜日

論文紹介 戦争における民主制の軍事的効率とは


政治体制の選択がその国家の軍事行動に及ぼす影響は政治学、軍事学の両方にとって興味深い研究対象でした。
特に民主制を採用する国家が、民主制を採用しない国家に対し、より高い軍事的効率を誇ることが指摘されてからは、その主張の根拠やその主張の含意について研究が重ねられています。

今回は、民主制が軍事的効率とどのような関係にあるかを考察した論文を紹介したいと思います。

論文情報
Biddle, S., and Long, S. 2004. "Democracy and Military Effectiveness: A Deeper Look," Journal fo Conflict Resolution, 48(4): 525-546.

1.軍事的効果を説明する
2.データ
3.操作運用
4.データ解析
5.結論と含意

この論文で著者は民主制に軍事行動の効率性を向上させる効果があることを主に軍事的観点から説明しています。

以前から民主制の軍事的効率に関する議論は存在していましたが、この論文はその議論で示された論点を整理した上で、民主制が軍事行動に寄与する媒介要因として人的資本、政軍関係、戦略文化の三つを挙げています。

著者の説明によれば、民主制という政治体制を選択することで、政府支出は生活水準や教育水準の向上に使用される傾向が強化されます。
さらに言論の自由や学問の自由、市場取引を通じ、さまざまな情報を取得し、学習機会や研究開発の誘因が強化されます。
こうした結果として体系的な軍事教育によらずとも、人的資本を強化することが可能となります。

著者は高度な人的資本で部隊を編成すれば、戦闘において複雑な戦術を遂行する能力を向上させることになると指摘しています。

また政軍関係について考えると、民主制では政権交代のために武力を使用する必要が必ずしもありません。
政治参加の範囲を最小限に制限すれば政治的安定を強化できる一方で、そのような政治体制は絶えずクーデターや反乱を警戒する必要があるため、人事権や指揮権の発動を通じて絶えず軍部に協力者を確保しておくことが重要となります。

このようなことは、純粋に軍事的な観点から業務を遂行することを困難にし、司令部の作戦を指導する能力を低下させるため、著者は民主制の下で政軍関係を運営するほうが軍事的効率を拡大しやすいと考えます。

最後に文化的要因ですが、先行研究ではしばしばアラブ社会の政治文化の属性が民主的というよりも権威的であり、その理由として家父長制度を基調とした階層的社会構造の傾向を挙げてきました。
著者は現代の陸上戦闘においては小規模な戦闘単位の自律的な作戦行動の優劣が軍事的効率に重大な影響を及ぼすことを指摘し、民主制における政治文化もまた戦闘での勝敗に影響すると論じています。

この論文の結論として、著者は民主制がその人的資本、政軍関係、戦略文化を通じて戦闘での軍事的効率に良好な影響を及ぼすという主張を繰り返し、これらの変数をコントロールした場合には戦闘効率が低下していることを強調します。

この論文の興味深い発見は、その因果関係を指摘するばかりではありません。

この論文の特徴はその方法であり、戦域で配備される軍隊の戦闘効率と、それを指導する国家の政治体制の間に因果関係を予想した上で、その関係を統計的資料によって裏付けながら、政治分析と軍事分析を組み合わせているところです。

なお、この論文で気になる民主制の評価の基準ですが、基本的に選挙制度によってコード化した次のデータセットを参考にしていることを付け加えておきます。
Bank, A. S. 1976. Cross-National Time Series, 1815-1973, ICPSR, ed. Ann Arbor, MI: Inter-University Consortium for Political and Social Research.
Jaggers, K., and Gurr, T. R. 1996. Polity III: Regime Change and Political Authority, 1800-1994, 2nd ICPSR version, Boulder, CO: Keith Jagger/ College Park, MD: Ted Robert Gurr, 1995. Ann Arbor, MI: Inter-University Consortium for Political and Social Research.

KT

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