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2014年8月4日月曜日

現実主義と自由主義では何が異なるのか


国際関係論には大きく分けてリアリズム(現実主義、realism)とリベラリズム(自由主義、liberalism)という二つの理論があると考えられています。いずれも国際関係における国家の行動を分析するための理論なのですが、その相違を理解するには、国家が何を目標として行動するのか、その「選好」に関する想定に相違があることを知らな変えればなりません。

一言で述べれば、リアリズムは「相対的利得(relative gain)」を重視する国家を想定しており、リベラリズムでは「絶対的利得(absolute gain)」を重視する国家が想定しているという違いがあります。

絶対的利得を追求する国家の事例として挙げられるのは19世紀から20世紀前半のヨーロッパ国際政治におけるイギリス、フランス、ロシア、オーストリア、ドイツ、日本などの国家です。
この時代は植民地を獲得するために各国は激しく競い合われ、戦争と外交を駆使して自国の影響力が優先的に行使される勢力圏を少しでも大きくすることが、その国家の経済的繁栄、引いては安全保障に繋がると広く考えられていました。

このような状況においてそれぞれの国家の国益は他の国家の国益と絶えず競合することになります。そのような利得の「相対性」によって互いに少しでも相手より優位に立つことが目指されていました。
しかし、国家は常に相手の利得が自己の利得と競合すると考えているわけではありません。
いわば共通の利益というものがありえると考える状況もあり、ヨーロッパの地域統合の動きはその一例と言えます。

かつてイギリス、フランス、ドイツなどの諸国は激しくその勢力を競い合いましたが、現在ではアメリカの影響の下で北大西洋条約機構の加盟国として防衛線を共有し、経済の統合を推し進めた結果、現在では欧州連合として域内の物流の自由化や貨幣の共通化を行っています。
これは国家の選好が変化したことを示すものであり、自らの利得の捉え方を変えて、相手との比較という観点ではなく、純粋に自国がどれほどの利得を獲得することができるのかという観点から考えるようになったことを示唆しています。

このようなリアリズムとリベラリズムの区別はグリエコ(1988)の研究によって打ち出されました。これはウォルツを中心とするネオリアリズムとコヘインなどを中心とするネオリベラリズムの間で展開されていた論争を理論的に整理し、両者が依拠する想定がどこで異なるのかを理解する上で大きな意義があったと言えます(論争の詳細についてはKeohane 1986で詳しく解説されています)。

その後、国際関係論では合理的選択理論に基づく研究が進んだことで、「いかに国家の選好が形成されるか」という方向へと問題関心が変化し、国際情勢によって国家の選好が変化する可能性と、国内情勢によって変化する可能性の両面から研究が進められています(Powell 1991; Baldwin 1993)。
現代ではリアリズムとリベラリズムの区分は以前ほどの重要性を失ったかもしれませんが、現在においても大学での教育だと国際関係論を学ぶ際の出発点として教えられることも少なくありません。

KT

参考文献
Grieco, J. M. 1988. ''Anarchy and the Limits of Cooperation: A Realist Critique of the Newest Liberal Institutionalism,'' International Organization, 42(3): 485-507.
Keohane, R. O., ed. 1986. Neorealism and Its Critics, New York: Columbia University Press.
Baldwin, D. A. 1993. Neorealism and Neoliberalism: The Contemporary Debate, New York: Columbia University Press.
Powell, R. 1991. ''Absolute and Relative Gains in International Relations Theory,'' American Political Science Review, 85(4): 1303-1320.

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