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2014年8月13日水曜日

論文紹介 なぜ外交は研究されないのか


国際関係を処理する上で、外交というものは最も重要な仕事の一つであることに疑問の余地はありません。

それにもかかわらず、外交に対する研究はそれほど活発というわけでもありませんでした。
これは日本だけでなく、世界的に見ても当てはまる状況ですが、今回紹介するシャープの論文はこうした研究動向を見直す必要を示唆しています。

論文紹介
Sharpe, P. 1999. ''For Diplomacy: Representation and the Study of International Relations,'' International Studies Review, 1(1): 33-57.

目次
1.外交の観念:覇権から孤立まで
2.外交に対する態度:市民、実務家、研究者
3.外交学
4.意思表示としての外交:研究課題のための若干のテーマ
5.近代の外交を超えて

著者は国際関係の研究者がより外交に対して注意を払うべきであるにもかかわらず、国際関係の研究と外交の研究が分断されていました。

その必然的な結果として外交学(Diplomatic Studies)の研究領域の位置づけが学会の中で副次的、周辺的なものとなってしまったのではないか、と著者は指摘しています。

ただ、こうした学会の状況は近年になって改善されつつあることも著者は指摘しており、アメリカにおいて外交を研究する講座の設置がハーバード大学、タフツ大学、ジョージタウン大学、ケンタッキー大学などで進められていることが報告されています(Sharpe 1999: 45)。

ともあれ、著者は外交に関する研究者は自身の領域に留まらず、より幅広い議論に参加することを促しています。
それまでの研究者は国家を中心とした外交だけに視野を限定してきました。
国家を重要な主体と見ること自体に問題はないのですが、そのことによって近年の国際関係論の研究が示唆する非国家主体による外交の重要性を無視してはならない、というのが著者の立場です(Sharpe 1999: 50)。

これは従来までの国家を中心に研究されてきた外交学の立場からすれば、論争を引き起こす主張ですが、議論する価値がある主張でもあります。

著者は外交を意思表示の一種として捉えており、交渉活動の領域に限定して把握していません。
つまり、職業的な外交官の交渉業務だけではなく、軍人、企業家、市民、代議士、マスメディアなど、現代の国際関係に影響を及ぼす意思の表明を外交として把握する必要を主張しているのです(Sharpe 1999: 50-55)。

私がこの論文を読んで興味深かったのは、外交という概念の捉え方ひとつで、研究の範囲が非常に大きく異なり、結果として期待される研究成果までもが変わってくる点です。

例えばアメリカにおけるイスラエルのロビー団体の影響力は知られていますが、あの事例を民間外交の一種として捉え直す場合、イスラエルとアメリカの外交関係を評価する場合、どのような国際関係論の枠組みを適用するべきかが問題となります。

シャープの論文は外交の捉え方それ自体を再検討する意義を主張することによって、外交学の重要性をさらに強化したということが言えます。

KT

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