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2014年7月14日月曜日

軍事技術と国際関係


あらゆる軍事力、特にその武器、装備の体系の機能は科学技術に依存するものです。
国際関係において科学技術の研究で仮想敵国に後れを取ることは、結果的に見て軍事力の低下を意味しています。

そのため、国家にとっての至上命題の一つは軍事技術の研究開発であり、その良否は安全保障に直接的な影響を及ぼすことになります。

冷戦期においてヨーロッパ方面の勢力関係において、数で勝るソ連軍に対する米軍の均衡を支えていたのは、米国の優れた軍事技術に他ならなかったと言われています(Brown 1983; Perry 1989; Johnson and Blaker 1996)。

軍事技術の重要性を理論的に分析した最初の研究者は、かの有名なランチェスターでした。
ランチェスターは「損害係数(Attrition Coefficient)」という概念を使うことで、数では同じ規模の部隊であったとしても、武器や装備の技術水準が異なっている場合、戦闘の結果には重大な相違をもたらすことが予測できると論じました(Lanchester 1916)。

このランチェスターの理論の実証性を検討する研究には大規模なシミュレーション研究と実際の軍隊を動員した演習が必要であり、実証研究は専ら軍によって独占されている状況です。
そのため、そうした論文を私が読むことはできませんし、それについて紹介することもできません。

(例外として、第二次世界大戦のアルデンヌの戦闘のシミュレーション研究があり、米軍の機密指定解除がなされたため今は報告書が読めます(Bauman 1995))

しかし、戦域規模の戦闘という戦略的観点から見た軍事技術の役割ではなく、国際システムでの勢力均衡における軍事技術の役割であれば、研究は一般に公開されています。

最近の研究から代表的な成果として「軍事における革命(Revolution in Military Affairs)」の研究が挙げられます。
ノックスとマレーは軍事力の効率に直結する発明、革新が発生した契機として、17世紀の国民国家の成立、フランス革命、産業革命、第一次世界大戦、核戦力の登場という五つを挙げています(Knox and Murray 2001: 6)。

こうした軍事技術の影響によって戦闘の様相が劇的に変化する可能性を指摘し、こうした軍事技術が攻撃と防御のどちらに有利かによって、国際システムの様相も変化するということです。

この議論をさらに発展させると、軍事技術によって地上に存在する国家の数を説明することも可能です。
つまり、世界で攻撃に有利な軍事技術が普及すれば、世界で弱小国が存立できる可能性が低下するので国家の数は減少しますが、防御に有利な軍事技術が普及すれば、弱小国でも独立を維持する可能性が向上するので、国際システムにおける国家の数が増大するのです。

KT

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参考文献
Brown, H. 1983. Thinking about National Security, Boulder, CO: Westview.
Perry, W. J. 1989. ''Defense Technology,'' in Clark, A., and Lilley, J., eds. Defense Technology, New York: Praeger, pp.23-30.
Johnson, S., and Blaker, J.1996. ''The FY 1997-2001 Defense Budget,'' Strategic Forum, 80(July): 3-4.
Hughes, W., ed. 1984. Military Modeling, Alexandria: Military Operations Research Group.
Lanchester, F. W. 1916. Aircraft in Warfare: The Dawn of the Fourth Arm, London: Constable.
Taylor, J. G. 1983. Lanchester Models of Warfare, Arlington, VA: Operations Research Society of American.
Bauman, W. 1995. Ardennes Campaign Simulation(ARCAS),Study Report, CAA-SR-95-8, Maryland: US Army Concepts Analysis Agency.
Knox, M., and Murray, W. 2001. The Dynamics of Military Revolution, 1300-2050, Cambridge: Cambridge University Press.

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