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2014年7月9日水曜日

論文紹介 もはや水陸両用作戦は不可能なのか

近年、東アジア各国では水陸両用作戦の研究が急速に進められています。中国は以前にも増して水陸両用作戦に特化した部隊の増強と武器の開発を続けており、日本でも陸自に水陸機動団が新設されつつあります。
しかし、こうした一方で海軍の一部から現代の軍事技術では対上陸作戦を遂行する防御者があまりに有利であるため、着上陸作戦の実行可能性は低下しているという指摘があります。

今回は米海軍の観点から21世紀の水陸両用作戦の実行可能性を調査した報告書の内容を紹介したいと思います。

文献情報
Turner, A. M. 2011. ''Amphibious Operations in the 21st Century: Are The Cost and Risks too High?'' Final Report, Newport: Naval War College.

これはアメリカ統合軍事作戦局の要請に基づいて執筆された水陸両用作戦の研究報告書であり、特に武器の観点から着上陸作戦の実行可能性を評価したものです。
興味深いことに、著者は現代の技術環境では防御者が攻撃者よりも圧倒的に優位であり、主要国間で戦争が勃発すれば、着上陸作戦を実施しようとしても従来よりはるかに大きな犠牲が出る危険性があると結論付けている点です。

その根拠として重視されているのは対艦ミサイル、そして機雷の発達であり、掃海と支援射撃に伴う技術的問題もこれに関連して出てきます。

1996年、台湾海峡危機でアメリカはクリントン政権の命令の下で2隻の航空母艦を中核とする打撃部隊を派遣したことがありました。この経験を踏まえて中国軍は対艦ミサイルを基本とする軍事戦略を策定します(Turner 2011: 6-7)。これが接近拒否(Anti-Access)、地域拒否(Area-Denial)として知られる現在の中国の戦略の基本的特徴となりました。

水陸両用作戦では部隊を海岸に送り出すために艦艇を停泊しなければなりません。この艦艇を対艦ミサイルで撃沈されるということは攻撃者にとって極めて深刻な事態であり、海岸へ接近する前に収容している地上部隊も失われてしまう危険性を考慮しなければなりません。
またターナーは対艦ミサイルだけでなく機雷も海上作戦で重要な防御手段であることに注意を促しています。技術的観点から見て機雷は対艦ミサイルほど高度な技術を必要としません。しかし、着上陸作戦を支援するために沿岸海域に接近しようとする艦艇にとっては重大な脅威となります。

湾岸戦争でイラク軍は第一次世界大戦前にロシアで開発された古い型の機雷をはじめとして、ソ連製、イタリア製の磁気機雷をクウェートの沖合に敷設しました。このことで、クウェートに米軍が着上陸作戦を妨害し、海域それ自体を封鎖したのです(Turner 2011: 9-10)。
さらに重要な点として、機雷を除去するための掃海活動には非常に時間がかかる場合が少なくないということです(Turner 2011: 11)。
著者によれば、2011年の段階で米海軍の掃海能力は深度600フィートから40フィートに敷設された機雷にしか対応しておらず、水陸両用作戦のために必要な掃海能力を持っていないと指摘されています(Turner 2011: 11)。
そのため、アメリカ軍が着上陸作戦を行うためには同盟国の援助が極めて重要であり、その具体例としてターナーは朝鮮戦争において米軍の作戦を支援した韓国と日本の掃海活動の事例を挙げています(Turner 2011: 12)。

まとめると、現代においても水陸両用作戦の重要性があることは確かですが、それを実行することは以前よりも難しくなっていると判断しています。むしろ、著者は将来の水陸両用作戦では人道支援、災害派遣、邦人保護、示威活動、急襲を目的とする場合が一般化することを示唆しています(Turner 2011: 16)。

いずれにせよ、アメリカの戦力投射能力を維持するためには、掃海活動に関する同盟国への依存を減らし、敵の射程外から攻撃するスタンドオフ能力の構築などが必要となりますが、それらも着上陸作戦の問題を根本的に解決できるものではありません(Turner 2011: 16)。

KT

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