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2014年5月9日金曜日

地図で地政学を考える


以前、地政学のすすめが好評でしたので、続編として地図判読の技法について紹介したいと思います。
地政学を研究するためには地図の知識が不可欠であり、また地図を解釈するためには独特な技法が必要となります。

地図上で戦略分析を行う具体的な分析の方法について、コリンズ(1998)は地域研究で戦略分析を用いるために次の5つの事項に着目することを提唱しています(Collins 1998: 340を参照)。
・地政学Geopolitics
・中核地域Core Area
・戦略的運動Strategic Mobility
・連合Coalition
・施設Infrastructure

地図上の大国領土とその大国が指導する衛星国の領土には、必ず戦略的に重要な地域が含まれています。それは経済的理由によるもの、軍事的理由によるもの両方を含みます。

こうした中核地域の間の部隊の移動を可能にするのが回廊地域です。それが分かれば、国家が連合関係、同盟関係を通じてどのように外交を展開するかが分かるだけでなく、軍事基地のような施設が設置されている理由も説明がつきます。

これだけではイメージしにくいと思いますので、コリンズが紹介するソ連の地政学的な分析の要点をここで示しておきます。
「戦略分析とは奪取、保持、破壊、ないし管理することで目だった優位をもたらす大きな政治的、経済的、軍事的、文化的意味がある目標を含む敵の中核地域をも評価する。 
冷戦期の米国の分析は全面核戦争が勃発した場合にヨーロッパのロシアにおいてソビエトの国家安全保障にとって死活的に重要であった複数の地域を特定していた。すなわち、モスクワ、レニングラード、ドネツ流域の重工業地帯、ウラル山岳地帯、バクー周辺の油田地帯である。 
二次的に重要な中核はタシュケント、クズネツク流域、バイカル湖、ウラジオストクは地域的に重要であるが、ソビエト連邦はこれらがなくとも強大な国家として存続することが可能である」(Collins 1998: 341)
すでに十分な地理の知識(この場合は地名とその位置の知識)があれば、冷戦期のソ連にとって死活的に重要な戦略要点はヨーロッパ正面に偏って分布していたことが直ちに分かります。

したがって、ソ連の防衛計画では主たる戦力をヨーロッパ正面に配備しなければならず、その国境線の広さにもかかわらず、戦略正面が地政学的な環境によって著しく制限されているということが言えるわけです。

この分析から東ヨーロッパの国々で緩衝地帯を構成するためにソ連がワルシャワ条約機構を置いて一元的な連合作戦の態勢を整え、かつバルト三国やベラルーシ、ウクライナまでをソビエト連邦に組み込まなければならなかった理由が説明できます。(詳細は以前の記事を参照)

地政学はある意味において地図上でその大国が重視するべき戦略正面を特定する技法であり、戦略学の一部と考えることもできるでしょう。

しかし、私の考えでは、地政学はそれほどの専門知識を必要とするわけではないと思います。
むしろ地政学は自然地理学と人文地理学の両方にまたがる地理に関する幅広い一般教養が必要ではないかと思います。

KT

参考文献
Collins, J. M. 1998. Military Geography for Professional and Public, Washington, D.C.: National Defense University Press.

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