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2014年5月5日月曜日

攻撃者と防御者の勢力均衡


以前、勢力均衡理論にミクロとマクロがあるという議論を紹介したのですが、今回はその続きとなります。

国際政治学には二カ国間の勢力均衡を分析する場合に使用する攻防均衡理論(Offense-Defense Balance Theory)という理論があります。

最初に国際関係における攻撃者と防御者の勢力関係を体系的に分析したのは防勢優位仮説を提唱したクラウゼヴィッツですが、現代の勢力均衡理論の枠組みでこの問題を捉えなおした研究者は恐らくクエスター(Quester)ではないかと思います。

クエスターの著作『国際システムにおける攻勢と防勢』(1977年)は1990年代以後に攻防均衡理論の研究が発展するまでよくその価値が理解されていなかった類の研究です。

クエスターが定式化したのは軍事技術は一般に軍事力を全般的に向上させるが、種類によっては攻撃力だけを高めるもの、防御力だけを高めるものがあると考察し、技術条件が変化するたびに国際関係における攻撃者と防御者の勢力均衡が変化するという仮説を提出しました。

この論点が攻防均衡理論の最も重要な命題として今でも参照されている考え方です。

クエスターの議論はかなり以前の軍事史まで参照するものですが、一例を挙げるとヨーロッパの近代化が始まると火砲が本格的に導入され、中世までの要塞築城を基礎とする防衛システムが有効性を低下させ、結果として近代的な国際システムの成立に寄与したという考察があります。

これは軍事史における軍事革命の議論を国際政治学の命題として一般化する大変興味深い議論です。
技術力だけに偏った議論だとか、攻防均衡の捉え方についての疑問点もあるのですが、軍事力が国際システムを規定する条件としていかに重要であるかを巧みに説明しています。

この議論は現代の文脈で捉えなおす場合の含意も重要であり、例えばミサイル防衛は攻防均衡においてそれまで防御手段がなかったミサイル戦の様相を変化させることを意味します。

あくまでも仮定の話ですが、ミサイル防衛によって弾道ミサイルを迎撃することが技術的に可能となった場合、それまでの国際システムを形成していた勢力均衡には急激な変化が生じることが予測されます。

別の視座として、情報技術の発展を背景とした最近の軍事における革命の国際的な普及を評価する場合、それが攻撃者と防御者のどちらに利益をもたらすのか、また両方に同等の利益をもたらすのかについて考えることが必要だと言うことをクエスターの議論は示唆しています。

国際システムでは潜在的な攻撃者と防御者の勢力関係が常に国際政治を左右しています。
こうした問題を理解するアプローチとしてクエスターの攻防均衡理論は重要な足場を私たちに残しています。

KT

参考文献
Quester, G. 1977. Offense and Defense in the International System, New York: John Wiley.

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