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2014年4月5日土曜日

弱者のための戦争、非対称戦争


強さは一通りではありません。弱者には弱者なりの戦い方があります。
この問題は軍事思想史でかなり古いテーマなのですが、特に2000年代から非対称戦争という概念で盛んに議論されるようになりました。
今回は非対称戦争が戦略学でどのような意味を持ち、どのような議論が行われたかを一部紹介したいと思います。

まず非対称戦争の定義ですが、非対称という言葉について米軍は次のように定義しています。
「非対称: 軍事作戦において、敵勢力の短所を突く代わりに敵勢力の長所を出し抜き、もしくは無意味にする類似していない戦略、戦術、能力、方法を適用すること」(JP 3-15.1)
つまり、非対称戦争とは敵勢力の短所ではなく長所に着目してその優位を逆用するために敵勢力と異種の方法で戦う戦争のことを意味します。

研究者たちが非対称戦争が関心を集めた理由は、予想外に中小国が大国との戦争で敗北しないことがあるためでした。
一般的な勢力均衡の考え方で言えば、人員、武器、装備に優れた軍隊が劣った軍隊に対して直ちに勝利を収めると予測されます。しかし、非対称戦争においては弱者が強者に一方的な優勢を許さないように、あらゆる変則的な作戦を展開してくるのです。

ある研究によれば現代では非対称戦争において劣勢な勢力が勝利する傾向が強まっていることが報告されており、その戦略を原理的に解明する必要が一層強まったと判断されています(Arreguin-Toft 2001)。

現在の戦略理論で非対称戦争はどのように説明されているのでしょうか。
非対称戦争を理解するためには「あらゆる戦略には理論上の対抗のための戦略が想定されている」ことが大前提となります。例えばクラウゼヴィッツは戦略理論で敵の最重要な部隊を重心と特徴づけて、それを打破するために我の戦力を集中させることを主張したことがあります。

これは要約すると攻撃の重点を極限まで限定的に設定してそれを一度の攻勢作戦で完全に殲滅することにより決定的な勝利を収める戦略なのですが、この戦略の大前提には敵の戦力が一定の程度において集中して配置されているという想定があるのです。
もしこうした戦略に対して戦力の分散を徹底した遊撃によるゲリラ作戦を仕掛けるならば、非対称戦争が成立するでしょう。

非対称戦争の原理は非常に単純なもので、古くから戦略思想史で議論されてきたものです。
「故に兵に常勢なく、水に常形なし。よく敵に因りて変化して勝取る者、これを神と謂う」、「兵は詭道なり」という孫子の有名なテクストは、非対称戦争の思想を的確に表現したものとして解釈することもできます。
その方法がどれほど時代によって変化しても、戦略の本質が相手を欺くことにあることは今も昔も変わりません。
「戦略とは(中略)戦力の弁証法の技術であり、より具体的には紛争を解決するために戦力を使用する二つの対抗意志の弁証法の技術である」ボーフル
参考文献
Arreguin-Toft, I. 2001. "How the Weak Win Wars: A Theory of Asymmetric Conflict", International Security, 26(1): 93–128.
Mack, A. 1975. ''Why Big Nations Lose Small Wars: The Politics of Asymmetric Conflict,'' World Politics, 27(2): 175-200.
Paul, T. V. 1994. Asymmetric Conflicts: War Initiation by Weaker Powers, New York: Cambridge University Press.

KT

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