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2014年4月15日火曜日

戦場の引き際は兵士の死に際

ご来訪下さり、誠にありがとうございます。
今回は防勢作戦において最も困難で知られる戦術、後退行動を紹介したいと思います。

定義:後退行動(Retrograde)とは敵から離れる組織的な運動に関わる防勢作戦の一種である(FM 3-0)。
後退行動で最も考慮すべきことは、敵が後退する我を追撃してくる可能性です。
背後を攻撃される場合、我の損害は極めて甚大となる傾向があるため、この問題に具体的な処置を行うことが後退行動の問題となります。

この問題を考えるためには後退行動に三つの下位分類があることを知らなければなりません。
・遅滞(Delay) 戦闘によって敵の攻撃部隊の動きを拘束しつつ行う後退行動
・離脱(Withdrawals) 敵との接触を断って戦闘を伴わずに行う後退行動
・離隔(Retirement) すでに敵との接触を絶った部隊がさらに距離を置く後退行動

図上戦術で遅滞を示すと、冒頭の図のようになります。
これは左の図から順に遅滞戦闘を行う方法を示しており、赤軍の攻撃に対して青軍はA大隊(部隊符号はIIです)とB大隊に分かれ、前後に異なる陣地を占領しています。
赤軍が攻撃するのに応じて、青軍はA大隊とB大隊が交互に後退行動を行い、こうした態勢を維持することで敵に背後を見せる危険を最小限に抑えることができるのです。


上記の図は離脱について説明したもので、(1)掩護を受け、かつ敵の圧力がある離脱、(左上)、(2)掩護を受けず、かつ敵の圧力がある離脱(右上)、(3)掩護を受け、かつ敵の圧力がない離脱(左下)、(4)掩護を受けず、かつ敵の圧力もない離脱(左下)の四つに場合分けされています。

離脱はそれまで敵と戦闘を行っていた部隊が行う後退行動の一種です。
原則として、敵の追撃を受ける危険を減らすことが重要であり、そのため離脱は可能な限り夜間に実施するべき後退行動と言えます。


最後に離隔の図示ですが、これは敵と接触していない状態での後退行動です。
そのために、前衛、後衛、側衛に偵察部隊を配置し、主力が速やかに後退することができるように処置するべきということが原則になります。
図の意味を説明すると、2個の主力の周囲を取り囲むように偵察部隊が警戒を行っていることがわかります。
主力の前進方向に対して前方にいる4個の部隊(うち2個は工兵部隊)が前衛、両翼側面に2個、後衛に1個の部隊が配置され、鍵形の矢印は警戒の範囲を表しています。

後退行動の成功は敵の攻撃機動に関する状況判断にかかっており、極めて難しいものです。

ジョミニは後退行動について「およそ退却が戦争で最も困難な作戦であることは確かである」「戦闘に敗北して潰走するさ中の軍の物心両面の条件や秩序を維持する難しさ、あらゆる場所で渦巻く混乱を考えるとき、どんな経験豊かな将軍でも、この種類の作戦に辟易とする理由を理解することはそれほど難しくない」と論じています。

だからこそ後退行動は戦場で重要な意味を持つ戦術問題と言えます。
戦史を見ると、戦闘による敗者の損害の大部分は敗北した直後ではなく、敗北した後の後退行動で発生する傾向があります。
勝利した側も戦闘で疲弊し切っているものですが、それでも追撃を行わなければ戦果は十分ではありません。
ここに後退行動が持つ戦術上の意義があるのです。

KT

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