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2014年4月12日土曜日

不正規戦争の戦略


不正規戦争(Unconventional War)という用語は「非国家主体による戦争」と言い換えることもできます。例えば、ゲリラ、テロリスト、パルチザン、革命運動家などによる武力行使がこれに該当します。
今回は、不正規戦争がどのような特徴があるのかを、戦略、戦術の側面から紹介したいと思います。

普段、国家の安全保障を支える組織は軍隊と警察の二つに分かれています。
前者は国際法に基づいて軍事力で(対外的安全保障)、後者は刑事法に基づいて警察力で対処する(対内的安全保障)ことが基本となります。

普段はこの区別だけで事足りるのですが、不正規戦争を仕掛ける勢力は、内部から国家の安全保障を破壊するために、対外的安全保障を担う軍隊と直接対決を回避し、対内的安全保障に狙いをつける特徴的な戦略計画を次のように実行します。

1.勢力の基盤を確立し、警察に対抗すること


不正規戦争は常に軍隊をゼロから組織するところから始めます。
人員を募集し、組織を整え、資金を調達し、武器を入手し、訓練を行うところから始め、殺人、強盗、要人暗殺、破壊工作、暴動の扇動などの犯罪を通じて、段階的に勢力を拡大していく戦略です。
この段階の最終目標は警察行動に対抗可能なまでに勢力を拡大することですが、ほとんどの場合はこの段階で失敗します。

しかし、不正規戦争を成功させた事例を見ると、民衆の協力を調達し、社会そのものを隠れ蓑にする戦略で、警察の実力行使を引き起こし、そのことで民心を誘導する心理戦を行っています。

活動のために政治団体、宗教団体、労働団体、犯罪組織などを母体にすることも有効な方法です。例えばロシア革命を指導したレーニンは労働団体を動員する戦略を基本としていました。また外国からの援助を調達することは資金や武器の調達を極めて容易にすることができます。

2.勢力の範囲を拡大し、大攻勢を準備すること


ある程度の勢力にまで成長させることができれば、それを正規軍に匹敵する規模にまで組織を拡大していきます。この段階に進むためには、国家の警察力を完全に封殺できるだけの勢力を確保していなければなりません。

この段階で最も重要な目標となるのは、国家の主要な施設や拠点を確保していくことです。というのも、次の段階に進む場合、相手の軍事力と対決して戦闘により勝利しなければならないためです。

1945年からのギリシャ内戦での共産党の戦略が失敗したのは、この段階を軽視したためでした。
当時、ギリシャ政府はアメリカとイギリスから援助を受けて急激に軍隊の装備が改善されつつあったのですが、ギリシャ共産党は国際情勢の変化からソビエトからの援助が途絶えてしまったことで拙速な大攻勢に出た結果、ギリシャ軍によって撃滅されてしまいました。

3.大攻勢によって相手の軍隊に勝利すること



正規軍と同等の勢力を獲得した後の不正規戦争の戦略は本格的な内戦を引き起こすことです。
この段階で我の部隊を敵の首都や重要都市へ進撃させ、これらを占領し、国家体制を破壊することが目標です。

第二段階で政府が亡命したり、警察や軍隊が機能不全に陥る場合もあるのですが、それでも頑強に国家体制を防衛しようとする場合、これを実力で排除する戦略計画に移らなければなりません。

この段階での戦略は国家間の正規戦争での戦略と類似してきます。
作戦基地を整備し、作戦正面を決定し、攻勢に出たり、防勢に回ったりして、部隊を敵の首都へ向かわせるためです。

この三つの段階は毛沢東が提唱した反乱を成功に導くための戦略計画を要約したものを参考にして私が整理したものですが、不正規戦争の戦略計画の特徴の概略はお分かり頂けたのではないでしょうか。

これは少し応用的な話になりますが、不正規戦争の戦略は非常に多様であり、民衆の支持が得られない場合には軍隊や警察、政党などの内部に協力者を獲得すればよいという立場もあります。この場合、クーデタという形で不正規戦争を遂行することになってきます。といっても、この戦略の場合でも国民の支持が必要となることには変わりありません。

つまり、不正規戦争の戦略的成否の大部分は心理戦にかかってきます。
以前、全体戦争でも議論したことですが、現代の安全保障環境はあらゆる社会分野を包括化、横断する傾向があります。

現代の社会活動において安全保障に全く関係がないものはほとんどありません。
視野を広く持つことこそが、安全保障で最も重要な原則だと私は考えています。

KT

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