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2014年3月7日金曜日

遠く、そして深く迂回せよ


本ブログでは攻勢作戦について、これまで包囲と突破を取り上げてきましたので、今回は攻勢作戦の戦術の一つ、迂回について述べたいと思います。

定義:迂回とは攻撃する部隊が敵の後方における目標を奪取することで現在地から敵を移動させるか、もしくはその脅威に対応するために主力を引き離させることによって、敵の主な防御陣地を避けようとする機動の一形態である。(FM 3-0)

戦術概念として迂回は敵の防御陣地を攻撃する包囲や突破と大きく異なっています。
それは端的に言えば戦闘を行わずして敵に後退を余儀なくさせる攻撃であり、背後に進出する動きを示すことで敵に戦場の大幅な変更を強制する戦術です。
直観的には包囲に近い戦術に思えますが、包囲は敵を撃滅することが目的であるのに対して、迂回は敵を移動させることが目的なので、この両者は戦術的に区別することができます。

図上戦術で迂回の概念を説明したのが上の図です。青軍が赤軍と向き合っていますが、青軍の右翼から機甲部隊、機械化歩兵部隊、航空部隊などを含む部隊が目標地点Davoutへ向けて迂回を行い、その迂回部隊の側面を偵察部隊が掩護しています。

この図で注目して頂きたいのは、青軍は左翼でも機械化歩兵部隊と機甲部隊を用いて目標地点Karlへ前進している部分です。これはDavoutへの迂回をより容易にするためのものです。
一見すると、赤軍が比較的容易に対処できる地点に小さな青軍部隊を前進させても、赤軍はすぐに対処できるように見えますが、そうする間に青軍が先にDavoutに到達してしまいます。

そうなると、赤軍は必要な後退できなくなってしまい、完全に青軍の手の内に入ってしまうのです。
以上から状況図での赤軍が採るべき戦術は速やかに現在地を捨てて後退行動を行うことと分かるのです。

この迂回でも気を付けるべき点は敵の逆襲です。迂回の動きを察知したならば、必然的に防御者はその動きを封じ込めるために予備を用いて迂回部隊に対処します。
迂回は主力から遠く離れた地点で行動するので、こうした逆襲に対しては独力で戦わなければなりません。迂回部隊には相当の戦闘力が必要であり、簡単に逆襲で撃退されてしまう程度の戦力であれば、迂回は成立しません。
しかし、攻撃者の戦力に一定以上の余裕がなければ、そのような戦力を抽出することはそもそも不可能なのです。

他にも迂回には独特の難しさがあります。迂回という戦術は戦力の集中という軍事の基本原則に反する側面があります。
戦力を分散するほど相対的に見て部隊が発揮できる戦闘力は低下するだけでなく、戦場の中心を避けて迂回させると、その戦術が敵の態勢に影響を及ぼすまでの間、迂回部隊はいわば遊兵にならざるをえません。

迂回が成功した戦史として一例だけ挙げると、朝鮮戦争におけるクロマイト作戦の例があります。
1950年9月15日に朝鮮半島で朝鮮国連軍により実施された作戦です。当時、北朝鮮軍の主力はプサンで陣地防御を実施していた韓国、米軍部隊に対して攻撃を加えていました。
その結果、ピョンヤンからプサンまで伸びる北朝鮮軍の後方連絡線が長大となってしまったのです。

国連軍を指揮していたマッカーサーは絶対的な海上優勢を利用して黄海から朝鮮半島のインチョンに着上陸し、ソウルを攻撃する迂回を実施し、これに呼応してプサン方面でも呼応して作戦を開始しました。この作戦により、国連軍は北朝鮮軍の戦線を大幅に後退させたのです。

KT

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