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2014年3月29日土曜日

防御によって敵を捕捉撃滅せよ

防御において敵を撃滅することは可能なのでしょうか。

以前の地域防御の解説で、防御の戦術が極めて受動的であり、防勢作戦で敵を撃滅することはできないのではないかという攻勢主義的な考えを持たれた方もいらっしゃるかもしれません。

戦闘で決定的な戦果を挙げるために攻勢が重要ということは否定しませんが、しかし防勢では決定的な戦果が挙げられないということは間違っています。今回の機動防御の解説はそのことを説明しようとするものです。

教範における機動防御の定義は次の通りです。
「機動防御とは打撃部隊による決定的な攻撃を通じて敵を撃滅もしくは撃破しようとする防勢作戦の一種である(FM 3-0)」

機動防御の最大の特徴は攻撃を行う敵へ逆襲を行うことにあります。
定義における「決定的(Decisive)」という言葉は「決戦(Decisive Engagement)」を含意するもので、要するに防御部隊は攻撃部隊に対して指向可能な打撃部隊を投入し、事後の敵の戦闘力のほとんどを喪失させなければなりません。

機動防御を行う部隊は大きく二つの役割に区分できます。
第一は正面で攻撃部隊を引き受けてその部隊を拘束する部隊、第二は拘束された敵に対して逆襲を加えるために打撃する部隊の二つです。
したがって、機動防御を行う指揮官は(1)陣地に配置した部隊で敵部隊を抑留、誘導し、(2)打撃部隊の逆襲で敵に決戦を強いる、という段階を考えなければなりません。

上の図はこうした機動防御の戦術を図示したもので、青軍が赤軍の攻撃を防御陣地により阻止し、その背後から打撃部隊を出して赤軍の側背を攻撃しています。

少し細かい点を説明すると、青軍の陣地はV字型になっていて、赤軍の攻撃部隊を引き込み、側面攻撃を容易にしています。
かつ背後に予備と後方支援の部隊が拘置されています。SOFは特殊作戦部隊の符号で、この図では赤軍の背後で特殊作戦部隊が戦闘を行うことで赤軍が青軍の打撃部隊に対処することをより難しくしています。

ただし、この場合、この特殊作戦部隊の戦術的な役割は打撃部隊ではありません。


機動防御をさらに詳細に説明すると、機動防御の戦術で第一段階はこのような態勢となります。
この図では青軍が赤軍の前進を阻止できるように陣地防御を行っていますが、やはり赤軍の一部の部隊が突出してくるように、部隊の配置に間隙があることが分かります。

背後には打撃部隊と予備が配備されており、赤軍の攻撃の推移に応じて投入される準備ができています。

この図では青軍の打撃部隊が赤軍の主力に対して逆襲のために側背を攻撃していることが分かります。
こうした一連の部隊行動でも打撃部隊の側面そのものを掩護するために緑色で障害を構成していることも記されていますが、これも側面を掩護するという戦術の基本原則を遵守したものです。
打撃部隊の生存性を確保することもまた機動防御において重要な処置であり、この逆襲が失敗すればそれは機動防御そのものの失敗を意味します。

このように実行に困難を伴いますが、それでも機動防御は極めて有効な戦術です。
第二次世界大戦においてドイツ軍は物量的に優勢なソビエト軍に対する防勢作戦として、この種の機動防御を成功させた事例もあります。

機動防御の優れたところ、言い換えれば恐ろしいところは、見当違いの包囲や力任せの突破の戦術で攻めてくる敵を戦闘不能に追い込むことさえできる点です。
しかも、それは敵の意思によって引き起こされた戦闘であるにもかかわらず、そのような態勢を強いているわけです。
「防御者における戦争の意図が単純な現状維持にせよ、敵の攻撃を撃退するに留まることは戦争の概念と矛盾する。なぜなら、戦争が単なる受動ではないことは明白であるためである」クラウゼヴィッツ
KT

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