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2014年3月25日火曜日

海洋産業の発展が海軍戦略に先行する

 Shipping on the Clyde by John Atkinson Grimshaw. Oil on board, 30.5 x 51 cm. Carmen Thyssen-Bornemisza Collection on loan to Museo Thyssen-Bornemisza, Madrid.
特に経済のグローバル化、つまり比較優位の原理に基づく国際的な分業が拡大する条件の一つは、生産地と消費地の間にある大きな距離を安価かつ安全に輸送する手段があることが不可欠です。

経済の世界的一体化の是非に関する議論は留保するとして、こうした経済のあり方は本質的に海運という輸送手段に全面的に依存している経済です。
世界経済の海上輸送を保護するシーパワーがなければ、現代の国際貿易は成り立ち得ません。

こうしが学説はシーパワーの古典的理論の一部であり、それほど目新しいものではありません。
マハンは海軍の戦略的意義を次のように説明しました。

「外国産の必需品や贅沢品は自国の船舶または外国の船舶のいずれかによって自国の港湾にまで運搬しなければならない。
それらの船舶はこれらの品物と交換で天然の資源であれ加工品であれその国家の産物を積載して帰路に就くだろう。
そして、この海運業を自国の船舶で行うことはすべての国家の願望である。こうして往来する船舶は寄港する安全な港湾を持たなければならず、また公開を通じて可能な限りその国家の保護を受けなければならない」

「この船舶の保護は戦時において武装した船舶により行わなければならない。
したがって、狭義の海軍は商船が存在してはじめてその必要が発生し、商船の消滅とともに海軍も消滅する。
ただし、侵略的な傾向を持ち、軍事組織の単なる一部分として海軍を保有する国家はこの限りではない。」

ここで肝心なところは、「商船」が「軍艦」に先行して発生するとマハンが考えているところです。
マハンが論文を発表していた19世紀はアメリカが孤立主義を堅持していた時代であり、主にヨーロッパ列強による植民地獲得競争が激化していた時代です。(ちょうど日本が近代化した時代でもあります)

マハンはこうした時代情勢の中でアメリカのシーパワーを拡大するためには海軍よりも先に海洋産業そのものを拡大しなければならないと議論しているのです。

この論点についてはあまり研究されていないようなのですが、私が思うにマハンは海軍を維持することが非常に大きな財政負担を伴うことを知っていたために、その国家の海上権益が一定以上にならないと海上戦力を保有したとしても収支が合わないと考えたのではないかと推測しています。

「侵略的な傾向を持ち、軍事組織の単なる一部分として海軍を保有する国家はこの限りではない」というマハンのシーパワーの議論を考えるならば、中国の海洋政策は海上戦力が海洋権益に先行している以上、マハンの考えるシーパワーの発展段階とは異なるものということになります。

こうした意味でもマハンの議論は中国の海洋戦略の特徴を読み解く上での一つの見方を示唆していると言えるでしょう。

KT

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