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2014年3月17日月曜日

国際政治を支配する軍事力



国際関係論において少なからず勢力均衡理論は批判されてきた経緯があります。というのも、それが私たちの常識的な理解と異なる部分があったためです。

以前、私の記事をたまたま読んで頂いた国際関係論を専攻する方とお話した時にモーゲンソー批判を耳にしました。というのも、モーゲンソーの理論で説明できない事象が、まさに我らが戦後の日本ではないかというのです。つまり、経済大国として日本は主に経済力で戦後の国際政治に影響を与えてきたというのです。

この誤解を解く前に勢力均衡理論の前提にある議論を説明しておきたいと思います。
勢力均衡理論を展開するに当たってモーゲンソーは次のように前提を置いています。
「国際政治とは他のあらゆる政治と同じく権力闘争である。国際政治の究極的な目的が何であろうと、直接的な目標は権力にある」
これは政治科学では一般的な前提とも言えますが、政治的活動において利益と見なされるのは基本的に権力であると想定することで、国際政治における国家の行動パターンを整理しようとしています。
「第一に、国家との関係において取られる行動の全てが政治的な性質を持つわけではない。このような多くの活動は通常、権力に対して何の考慮をせずに行われるし、またこういった活動はそれを実施する国家の権力にとって何の影響を及ぼすものでもない」
ここでモーゲンソーは国家の政治的行動を非政治的行動から除外し、政治的行動だけを説明する理論に自分の関心を集中させています。
「第二に、全ての国家が常に同程度に国際政治に関与しているわけではない。この関与の程度は今日のアメリカやソ連のように最大限のものから、スイス、ルクセンブルク、あるいはベネズエラといった国家のように最小限のもの、さらにリヒテンシュタインやモナコのように完全に無関係なものに至るまで実にさまざまである」
ここでモーゲンソーは国際政治学における位置づけとして中小国を大国と区別しているのです。

勢力均衡理論の前提は基本的にこうした命題に基づいています。国際政治を支配する勢力均衡は基本的に大国の政治行動を説明するものであるということです。

したがって、モーゲンソーは勢力均衡理論で全ての国際関係論の事象を説明しようとしたわけではありませんし、中小国家の動向や大国の非政治的行動は意図的に理論構築では無視しているのです。

こうした議論に一貫しているのはモーゲンソーの学問的な謙虚さです。モーゲンソーは国際政治を説明する上で最も重要な要因である大国の政治行動に自分の議論を限定しながら勢力均衡理論を考案したのです。

したがって、勢力均衡理論を大国でも何でもない日本の事例に適用できないと主張することは間違っています。
端的に言ってしまえば、冷戦期の日本はアメリカを盟主とする西側陣営の一構成国に過ぎませんし、通常戦力では一定程度の能力を持ちますが、核戦力では完全に依存しています。

国際政治学において経済大国という言葉には「定義」がありませんし、かりに「経済力」を定義できたとしても、それだけで「大国」の条件を満たすかは疑問です。なぜなら、モーゲンソーは国力の要素についての議論の中で、地理や資源、工業力が重要な理由はそれが「軍事力」に寄与するためであると主張しているためです。

まとめますと、国際政治を動かすのは大国であり、大国の条件とは究極的に軍事力に他ならないとモーゲンソーは考えます。そのために日本の行動をモーゲンソーの理論で説明することは原則としてできないのです。
「世界を牽引する秘訣はただ一つしかない。それは強くあるということである」ナポレオン
KT

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