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2014年2月8日土曜日

演習問題 状況判断の適否は何で決まるのか


あらゆる戦術の基礎には必ず、その決心に至る状況判断という基礎があります

戦術学の用語としての状況判断の意味は、与えられた任務に基づいて、敵情や地形などの諸状況を総合的考慮し、任務を達成する方法を定めることです。状況判断は作戦方針の決心そのものではなく、どちらかと言えば意思決定に至る思考過程を言うもので使われることが多いと思います。(陸自では状況判断という言葉を使うのですが、海自、空自では少し違う用語かもしれません。研究不足で申し訳ないです)

今回の問題も陸大の講義録を参考にしたものにしました。軍単位の作戦を基本に、師団としての状況判断を研究するものです。

想定の概要
・本日0時より青軍はX川を挟んで赤軍と既に戦闘を開始している。
・現在の両軍の勢力は同程度であり、ともに相手の右翼に攻撃目標を定めて数度の渡河攻撃を実施しているが、双方の抵抗によりどちらも成功していない。
・事前に得ている情報によれば、赤軍の増援として1個師団相当の部隊がX川に向けて行進中であり、早くても12時間後には作戦地域に到達する。
・青軍の増援として派遣された我が第1師団は青軍の作戦地域に12時間で到達できる地点に進出している。
・青軍司令部からの第1師団は次の要旨の命令を既に受領している。「第1師団は速やかに青軍の作戦地域に進出して戦闘に加入せよ」
・現在、我が師団が独自に入手した情報によれば、赤軍の増援1個師団は赤軍に直接合流せず、青軍の最左翼から5キロ程度離れた地点を渡河して、青軍を側面攻撃できる地点に前進している模様である。その地点に到達する予想時刻14時間後である。
(いずれの部隊にも相応の渡河資材を有するものとする)

問題
第1師団は次のいずれの決心を採用するべきか。
1.第1師団は速やかに主力に青軍の主力に合流する。
2.第1師団は赤軍の最左翼から5キロ離れた地点を渡河し、赤軍の増援が攻撃を開始するより先に赤軍の左翼を側面攻撃する。
3.第1師団は青軍の最左翼から5キロ離れた地点に前進して赤軍の増援のX川渡河を阻止する。

(2014年2月9日追記)

答案
1.正解。状況判断で第一に考えなければならないのは任務です。軍司令部からの作戦命令には「第1師団は速やかに青軍の作戦地域に進出して戦闘加入せよ」とあり、青軍司令官は第1師団の戦力を可能な限り早く主力、つまり防御中の左翼、もしくは攻撃中の右翼に配置したいと考えられます。青軍司令部として命令を出している以上、第1師団を速やかに戦闘に加入させるため既に他の隷下部隊にも命令を発して調整していると考えられます。増援については同部隊が15時間で側面攻撃を開始する前に、第1師団が12時間で青軍と合流できれば、最左翼の部隊に警報を発し、部隊を下げて鉤型陣形を形成し、増援を派遣することで側面攻撃に備えることは十分に可能です。

2.この問題の想定では作戦案で示されている赤軍の最左翼から5キロ離れた地点が渡河可能かどうかという地形判断ができないはずです。もし渡河が可能で赤軍の側面攻撃ができたとしても、青軍の主力と連携することができなければ、赤軍の主力は直ちに第1師団の側面攻撃に対処することが可能です。そうなった場合に第1師団は退却することも、青軍と呼応して反撃することもできません。そして何より赤軍の増援に対して青軍の主力が気が付かなければ、青軍は貴重な増援を全て失うと同時に、左翼から包囲を受ける危険があります。

3.この作戦案ならば、青師団が包囲される危険は回避することができますが、青軍の主力と合流できず、事後の作戦指導において青軍司令部には大幅な方針の転換が求められます。青軍の主力は既に赤軍との戦闘で消耗していることを考えれば、新たな増援なしで渡河攻撃を行うことには危険が伴います。結果的に赤軍も手詰まりとなりますが、これでは先に赤軍の増援の動向を察知することができていたという情報優勢を全く活用していません。答案1を採用した場合、つまり第1師団が主力と合流でき、かつ赤軍の増援の側面攻撃が失敗した場合と比べて、青軍は赤軍の主力を撃破する機会を逃すことになります。

KT

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