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2014年2月24日月曜日

ロシアの地政学から見た東ヨーロッパ、そしてウクライナ

ウクライナ情勢で大きな動きがありました。
BBC(http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-26317912
特に重要な状況について述べておくと、
・大統領ヤヌコーヴィッチがキエフより脱出し、現在の正確な所在は不明
・釈放された元首相ティモシェンコが大統領選に出馬を表明
・ウクライナ議会が大統領の行政権を議長トゥルチノフに代行させる決議を採択

ウクライナ国内情勢についてはすでに前の投稿でも扱ったことがありますので、今回は東ヨーロッパ情勢におけるウクライナの位置づけ、特に地政学的な影響に重点を置いて整理しておきたいと思います。

ここで引用している地図はJ. M. CollinsによるMilitary Geography for Professionals and Publicからの引用です。
この地図で強調されているのはロシアの安全保障にとって東ヨーロッパ諸国は特にドイツに対する緩衝地域としての価値があるという点です。第二次世界大戦が勃発して以降、ソビエト連邦として併合された従属国(点線)と共産党政権を擁立してワルシャワ条約機構の構成国にした国家(斜線)が識別されています。

この地図から東ヨーロッパの地政学的な勢力図の概略を読み取ることができます。
つまり、ロシアは防衛正面が最も狭くなる地帯、つまり正面に対する戦力の密度が最も高くなる地帯にソビエト連邦の国境線を置いているということです。

従属国としてソビエト連邦に併合したのはバルト三国、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバまでですが、独立させながらソ連を盟主とするワルシャワ条約機構の構成国の地位に置いた国家にはポーランド、東ドイツ、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアがあります。

この二つの国家群の境界線はバルト海に面する戦略要点カリーニングラードから黒海に面するオデッサに至るおよそ1000キロであり、これはドイツからロシアに至る東ヨーロッパ地域で最も狭隘な地帯を構成しています。
またこの戦略上の防衛線からモスクワまでの距離は最短でもおよそ800キロで、これはロシア国境からモスクワまでの最短距離が約400キロのことを考えれば、倍以上の縦深を確保することができる計算になります。
(ちなみに当時のソ連軍の編成、装備、運用から連隊1個で防御可能な正面幅は最大10キロ程度と考えられています)

さらに加えて、以前の記事でも指摘したように、ウクライナのセバストポリはロシア海軍黒海艦隊の根拠地であり、ウクライナとの外交関係が悪化すれば直ちにロシアの海洋戦略に影響が出ることになります。

今回の政変でウクライナがEU加盟を推進する動きを再び見せていますが、この政変でロシアがそのままウクライナを諦めることは考えられません。
現在のところ私がまだ分かっていないのは、現時点で一体誰がウクライナ軍を掌握しているかというところです。現有勢力12万名(地上軍6万名)のこのアクターの動き方次第でウクライナ情勢はまだ大きく変化する危険があります。
ヤヌコーヴィッチが東ウクライナで態勢を立て直してキエフに帰還する可能性がなくなったわけではありませんし、東ウクライナの分離独立を進める戦略も考えられます。東ウクライナはヤヌコーヴィッチの支持基盤でもあり、セバストポリに駐留するロシア海軍の動きも不透明です。

ウクライナ情勢がどのように推移するにしても、ウクライナは東ヨーロッパ地域におけるロシアの安全保障そのものであり、ウクライナのEU加盟はヨーロッパ全体の勢力均衡を大きく損なう結果になるでしょう。

KT

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