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2014年2月22日土曜日

包囲する者は、包囲される


今回の投稿では陸上での攻勢作戦において最も有効な戦術の一つ、包囲を取り上げたいと思います。

まず出発点となる定義から述べると、包囲とは一般に「攻撃部隊が現在陣地にいる敵を撃滅するためにその背後を攻撃目標とすることによって敵主力の防御を避けようとする機動の方式」のことを言います。(FM3-90: 3-29)

また包囲はその機動方式から一翼包囲(Single Envelopment)と両翼包囲(Double Envelopment)に大別されます。
空中機動が可能な部隊による包囲については垂直的包囲(Vertical Envelopment)として従来の包囲と区別します。

これは予備知識になりますが、戦術学で部隊の機動方式には少なくとも五つの類型があります。

今回取り上げた包囲以外に、迂回、浸透、突破そして正面攻撃の五つです。
包囲は攻勢作戦の機動方式として最も代表的なものであり、これまでさまざまな戦史の事例で有効性が実証されてきました。

包囲のメカニズムを理解するためには、戦闘部隊は通常は作戦地域の正面に戦闘力を集中的に発揮するように運用されることを理解しなければなりません。

防御戦闘において部隊の小銃手、機関銃手などが発揮できる戦闘力を最大限にするためには、敵が前進してくる経路を予想して、目標を効果的に射撃できる地点に築城をほどこさなければなりません。

具体的に言えば、地形を偵察し、各区域に分隊員に配置し、塹壕と連絡壕を掘り、偽装をほどこし、地雷原や蛇腹で通路を封鎖し、有線通信を構成し、銃座の位置を決定し、戦闘時の要領を徹底させるなどの作業を行わなければなりません。

したがって、一度配置についた戦闘部隊を頻繁に陣地転換させることは、こうして準備してきた優位を放棄することを意味します。
それゆえ、包囲は特に側面を暴露した敵に対して、極めて有効な戦術として考えられてきました。

あらゆる攻勢作戦において機動は必須の要素ですが、これは包囲において特に当てはまります。
なぜなら、包囲は常に防御者の逆襲によって逆包囲される危険を孕んでおり、敵が最初の混乱を脱して態勢を立て直すまでの時間で成否が決するためです。

防御者は通常、攻撃者の包囲に迅速に対処するために、後方に一定の規模の予備を拘置します。
この予備によって包囲を仕掛ける攻撃が失敗すれば、包囲を行うために敵の側面や背後に回り込んだ部隊は敵地で孤立してしまうことになります。

以上で包囲の基本的な性格について説明できたと思いますので、包囲の一例を図上戦術で図示します。

今回の投稿の冒頭にある図は米陸軍の教範にある図上戦術上の包囲です。これは赤軍(敵)の陣地防御に対して青軍(我)が両翼包囲を行っていることを示しています。

図示で用いられている部隊符号を簡単に解説しておきます。

青軍は正面攻撃を行うことで敵の動きを拘束する機械化歩兵部隊があり、その左後方に作戦地域の正面、左翼どちらにも展開できる予備として機械化歩兵部隊1個が拘置されています。

青軍の左翼から敵を包囲するための歩兵部隊1個と戦車部隊2個が回り込んでおり、また包囲を行う攻撃部隊そのものの側面が無防備にならないために偵察隊が展開していることが分かります。

それに加えて青軍の右翼からは空中機動による包囲が行われており、敵の背後で左翼から包囲を試みる部隊と合流することが分かります。こちらに用いられている部隊は回転翼機の航空部隊とヘリボーンが可能な歩兵部隊です。

赤軍は正面に機械化歩兵部隊、左右両翼に歩兵部隊、背後に砲兵隊を含む機械化歩兵、赤軍左翼後方には予備に戦車部隊2個が配置されています。

この図上の状況において青軍の包囲の成否は赤軍の予備がどのように動くかで変わってくるでしょう。
また青軍の右翼の包囲動作を妨害するために赤軍の背後の予備は正面の機械化歩兵部隊が孤立しないように直ちに戦闘加入すると考えられますが、青軍の正面攻撃が一度成功してしまえば赤軍は退却を余儀なくされます。

関連項目
陣地防御について
機動防御について
後退行動について

KT

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