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2014年2月20日木曜日

政治指導者と軍事的リーダーシップ


今回は政治指導者の軍隊への統帥に伴う問題について紹介したいと思います。

かつてのフリードリヒ2世やナポレオンの時代おいては政治的リーダーシップと軍事的リーダーシップは一体不可分でした。国家の指導者は政府と軍隊の長を兼ねていました。

しかし、現代の政治家の状況は大きく異なっています。彼らは軍務ではなく党務や選挙といった政治的領域でのリーダーシップを発揮することが求められているためです。
したがって、軍務の経験がない政治家が大統領や首相に就任するため、軍隊を統率する際には大変な困難に直面することになります。

この問題に最初に体系的な分析を行ったのがサミュエル・ハンチントンでした。

ハンチントンはその国家で軍事力を最大限に活用できるかどうかは、その国家で支配的なイデオロギーが反軍的などうかによって変わると論じました。

その理由は、その政治指導者はその社会で支配的なイデオロギーを政策に反映させようとするためです。
もしその軍の指揮権を握る政治指導者が反軍的姿勢を示すならば、軍人は業務の遂行に著しい困難が生じます。
そのことが結果として、専門職的能力、戦闘技術を低下させるだけでなく、上官である政治家の反軍的イデオロギーにとって忠実な政治将校へと変貌せざるをえなくさせます。
「(反軍的イデオロギーの社会においても)将軍や提督は権力を獲得できるかもしれないが、職業軍人倫理はそうはいかない。政治権力が持っている抑制の効果は彼らを良き自由主義者、良きファシスト、良き共産主義者にするが、専門職業人としては無能にしてしまう。(軍隊において)専門的職業遂行上の満足とその専門的職業上の規則を固守することが、権力、地位、財産、名声の満足と非軍人的集団の称賛により置き換えられるのである」
ハンチントンの懸念は、軍事上の意思決定に政治イデオロギーを反映させるやり方で、自由主義者や社会主義者が軍事的リーダーシップを弱体化させることにありました。

現代において陸海空軍を適切に指揮監督するためには国家安全保障政策に関する助言や提言を踏まえて決定を下し、必要な命令を発しなければなりません。
ここで求められるのは指揮官として情勢を洞察する判断力であり、政治的活動で求められる能力とは本質的に異なるものです。

(興味深い論点なのですが、保守主義者の政治指導者は擁護されています。保守主義に反軍的要素がないというのが彼の説明ですが、この点は議論の余地があるでしょう)

国家を防衛する指導者の政治的姿勢が、有事における軍隊の働きに影響を及ぼすことを示唆する議論として、現代の安全保障にとっても興味深いものです。

かつてナポレオンは「悪い連隊など存在せず、あるのは悪い連隊長だけだ」と言い残しましたことがあります。
だとすれば、国家の安全保障の責任者を我々はどのように選ぶべきなのでしょうか。

KT

参考文献
Huntington, S. P. 1957. The Soldier and the State: The Theory and Politics of Civil-Military Relations, Cambridge, MA: Harvard University Press.(市川良一訳『軍人と国家』原書房、2008年)

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