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2014年2月14日金曜日

図上演習のすすめ


1963年、かなり昔の話ですが自衛隊の内部で極秘裏に朝鮮有事を想定した兵棋演習が行われていたことが国会で暴露されて事件になったことがありました。いわゆる三矢研究事件です。

争点化されたのは有事における日本の法制上の問題について研究していた点にありました。
その研究では有事法制、特に人的、物的資源の動員や軍法会議の設置に関する幅広い論点整理が行われたものでした。国会での議事録や過去の新聞報道でその詳しい内容を知ることができます。

今回取り上げたいのは、そもそも図上研究がどのようなものなのかということです。アメリカの統合幕僚本部が出している教範では、図上研究を幕僚作業が担当する意思決定過程の一部として位置付けており、作戦方針を策定するに当たって図上研究により個々の作戦案の長短を評価するように指示しています。
したがって、図上研究というものは幕僚業務の中に含まれる標準作業手続きであり、その研究目的や研究方法は場合により異なりますが、少なくとも師団以上の司令部には必ずこうした図上演習に必要な器材が備え付けられています。
また小部隊においても図上研究をしないわけではないのですが、これについてはまた別の機会に紹介します。

図上研究の基本的な要領は決まりきったもので、研究する主題によっても異なります。しかし一般に「地図上に問題となっている状況を表現する」という特徴はあらゆる図上研究に共通するものです。
地図上にはトークンのような部隊符号が記載されたプレートが配置されており、彼我の態勢がどの地点におおむね存在するかが概観できるようにします。この投稿で添付している米陸軍の写真のように、現状における部隊の配置状況を全て整理することで、緊要地形とそれに対する接近経路に対する彼我の部隊の戦闘陣形の適否を評価することができます。

もし師団の戦術を研究するなら2万5000分の1の地形図を用いる場合が多いと思いますが、国家安全保障政策の全般に関する研究であれば地勢図、もしくは複数の地図を用いる場合もあります。これは演習計画の目的や統裁の態勢、演習員の技量などによって異なるでしょう。
また非常に詳細な状況を付与してマルチレベルシミュレーションのように師団レベルから中隊レベルまでの意思決定の問題を研究することもできますし、戦果の判定などの統裁をマニュアルでやることもあれば、コンピュータで処理する場合もあります。

図上研究にはほとんど無限の実施方法があるのですが、最も重要なことは地図上で研究主題について演習員たちが共通認識を持って問題を検討できることです。これは意思決定の訓練としても、また純粋な研究としても強力なツールです。
残念ながら私は技量不足で大規模な図上演習を統裁できるだけの知識も技術もないのですが、いずれこうした手法を国際関係論や安全保障学でもっと普及させることができればいいと思って勉強しております。

KT

3 件のコメント:

  1. 図上演習に関する文献、論文、書物を教えて頂けませんか。

    また、キングダムという春秋戦国時代を扱った戦争漫画で、斥候隊が木の枝や大小の石を並べて、現況把握や作戦立案を行ってました
    こういうのは有効なのでしょうか。私のような一般人も、図上演習として粘土細工や石、木を並べて行えば、効果は身に付くのでしょうか。

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    1. 図上演習に関する文献は非常にたくさんあるのでどの文献が適切なのか判断が非常に難しいのですが、一般的な文献として私がお勧めすることが多いのは、ジェームズ・ダニガン『ウォーゲームハンドブック』鈴木正一訳、ホビージャパン、1982年ですが、現在は入手し辛く、内容も比較的初歩的なものですので、英語で読むことをお勧めします。(http://www.professionalwargaming.co.uk/Complete-Wargames-Handbook-Dunnigan.pdf)ただし、現在は最新版も出ていますので、必要があるかどうかをまずこちらで確認してから購入を検討すればよいと思います。曖昧なお返事となり申し訳ありません。

      また、ご指摘された研究方法ですが、それは簡易な砂盤研究のことだと思います。これは特に小隊以下のレベルの戦術を研究する上で大変有効な方法であり、現在でも陸自は砂盤を用いた訓練や研究を行っていますし、駐屯地見学の際に砂盤演習を展示する場合もあります。
      私が依然に発表した記事「砂場で戦術を考えてみる」(http://militarywardiplomacy.blogspot.jp/2015/08/blog-post_484.html)もまた参照して頂ければどのようなものか分かると思います。

      最後に、図上演習は特別な知識を必要とするものではなく、実際に部隊を動かす機動演習と同じように、さまざまな状況を図上で再現し、研究または訓練するためのものです。確かに図上演習では演習員が実際の状況について十分に想定できる程度の武器装備や部隊行動に関する知識は必要ですが、部隊勤務の経験が必須であるかといえば、必ずしもそうではありません。海外ではこうした図上演習、兵棋演習を一般の学生に行わせることで防衛教育を行っている場合もあり、例えば中国では人民解放軍が主催して大学対抗の大会も開催されています。

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  2. 脳内だけでなく、視覚化する事に訓練の意義があるのですね。
    一人でやる場合、客観的に状況を判断して物事を進ませることが難しそうです。
    返信ありがとうございました。

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