最近人気の記事

2014年2月18日火曜日

作戦指導の成否を分ける隘路


戦術や戦略でよく用いられる軍事用語の一つに隘路というものがあります。隘路とは急峻な山脈や河川のような障害地帯で部隊の運動が困難な経路のことを言います。

こうした隘路の戦術的な特徴は攻めにくく守りやすい地形であります。今回はナポレオンが戦略的な観点から隘路をどのように見ていてたかという議論を紹介したいと思います。
「ある地方を進攻する軍はその側面を中立国の領土、河川、山脈のような広域の障害地帯で掩護するものである。さもなければ、その軍は片方の側面、もしくはどちらの側面も掩護していないことになる。 
第一の状況なら将官は正面で前線が撃破されないように注意するだけでよい。第二の状況なら掩護された側面を頼りにする必要がある。第三の状況なら主力とは別に若干の軍団を拘置し、それが部隊の中心から離れることを決して許してはならない。二つの側面が無防備であるということは一つの不利であり、その四つの側面が空白であれば不都合は二倍に、六つの側面が無防備であれば不都合は三倍になる。 
第一の状況ならある程度は左右両方の側面に作戦線を依託することができる。第二の状況なら作戦線は掩護された側面に依託したほうがよい。第三の状況なら行軍する軍が展開する戦線の中央に対して作戦線を垂直にするべきである。 
ただし、ここで述べたいずれの状況においても、五日か六日の行軍で到達できる地点に要塞や塹壕陣地を配置し、そこに食糧や軍需物資の倉庫を設営し、輸送部隊を組織することが求められる。そうした拠点は部隊行動の根拠地、補給処として機能し、引いては作戦線を短縮させることに寄与する」 ナポレオン・ボナパルト
山がちな地形では部隊を隘路の前に置くか、後ろに置くかで戦闘での優劣が大きくことなります。ナポレオンはこうした隘路が作戦線を掩護する性質を利用し、できる限り背後に置いて作戦を実行するべきであると主張しているわけです。ただし、隘路を後方にする場合には部隊と基地の間の距離が長くなりがちなので、補給について注意を促しているのです。

日本の国土はその大部分が山脈地帯であり、隘路の数が極めて多いという地理的な特性は意外なことに、あまり知られていません。

これは武力行使や自然災害で隘路に通じる幹線道路が破壊、封鎖された場合、作戦地域への別の接近経路を探すことが難しく、師団や旅団の行進が非常に制限されることを意味しています。
実際、東日本大震災でも作戦地域に部隊を前進させるための経路選択が大きな問題となりました。

そのことで、大規模災害対処における海上、航空戦力の価値が見直されたことは記憶に新しいことです。

安全保障学というものは単純に軍事力を強化するだけという議論に留まるものではありません。国土の地理的な特性を国土開発や交通政策との関連からも研究する必要がある側面も持っています。

KT

0 件のコメント:

コメントを投稿