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2014年1月29日水曜日

演習問題 攻勢と防勢の選択

その作戦の指導を攻勢か防勢のどちらを重視するべきかという問題は戦術学の研究で最も古典的な問題の一つに数えられます。クラウゼヴィッツは防御が攻撃よりも優勢な戦闘方法であると主張しています。教科書的にその主な根拠を述べるなら、地形地物を活用して防御陣地を構築してそこに部隊を配置させることができるためという答えになります。

しかし、戦闘で敵を殲滅して決定的な勝利を収めるためには攻撃が不可欠であるという主張も間違っているわけではありません。戦術的な選択肢として攻勢と防勢はそれぞれ期待される危険と戦果がトレードオフの関係にあり、状況によって達成するべき任務から決定しなければならないのです。

こうした攻勢と防勢のトレードオフの関係の理解を問う演習問題として次のようなものがあります。なお、あくまでこれは図上戦術の問題として考えて下さい。

想定
・青師団と赤師団はそれぞれほぼ同等の勢力を有しながら、ある河川を挟んで対峙している。

・青軍、赤軍の作戦地域内にはA地点、B地点、C地点という三か所の渡河が可能が地点がほぼ等間隔に存在し、両軍とも部隊を渡河させるための装備、資材を持っている。

・青師団長は本日夜間にA地点から主力を対岸へと前進させて赤師団の主力を捕捉撃滅すると決心した。この主力の渡河に先立って赤師団の主力を牽制する目的で青師団の一部の部隊によってB地点、C地点から渡河攻撃を行うものとする。

・赤師団長は赤師団のをそれぞれの渡河地点に配備して青師団の渡河攻撃を妨害する。赤師団の主力は河川から離れた後方に拘置しておき、青師団の主力がどのA、B、Cどの地点から渡河するかが判明した後に攻勢に移転してこれを撃滅する。

問題
青師団と赤師団の決心について次の選択肢から正しいものを選べ。

1.青師団の決心が正しい。なぜなら青師団は赤師団の側面に進出して有利に戦闘を指導することが可能であるためである。
2.青師団の決心が正しい。なぜなら青師団は赤師団よりも渡河攻撃を行う地点に戦力を集中させているためである。
3.赤師団の決心が正しい。なぜなら赤師団の主力は渡河中の青師団の主力を攻撃することができるためである。
4.赤師団の決心が正しい。なぜなら赤師団の主力は青師団が渡河した後でも主力は退却することが可能であるためである。

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(2014年1月30日追加編集)
投稿を整理して以下に答案を追加しておきました。
それぞれ自分の答えを検討した上で答案を参照してみて頂ければと思います。


この演習問題は攻勢作戦と防勢作戦という二つの作戦指導の特性について問うものです。
想定は陸軍大学校の戦術学の講義録を参考にして私が作成しましたが、問題そのものは講義録で出題されている問題をほとんどそのまま使用しています。ただし、答案は私自身の研究によるものです。答案は以下の通りです。

1.敵の側面に進出できるという理由で青師団の決心が妥当なものとは言えない。赤師団の主力が後方に拘置されているため青師団が実質的に側面攻撃が可能なのは赤師団がB、C地点に配置して河川防御を行う一部の部隊に過ぎない。もし青師団の主力が赤師団のB、C地点の支隊を攻撃する間に赤師団の主力が戦場に到着すると青師団の主力の側面が攻撃を受ける危険がある。

2.青師団の主力が渡河地点で赤師団よりも戦力を集中させているわけではない。想定には青師団の主力によるA地点の渡河攻撃に先立って、支隊によりB地点、C地点でも牽制のための渡河攻撃を行うとある。こうした牽制のために用いる部隊を考慮すれば、青師団の指導が赤師団よりも戦力を集中させることができるとは言えない。

3.正解。渡河攻撃を開始した部隊は出発地の岸で準備する部隊、渡河の途中の部隊、目的地に到達した部隊に分かれることになる。赤師団の支隊の抵抗を排除して青師団の主力が渡河を行っている途中もしくは直後に赤師団の主力が戦闘に加入すると青師団の主力はほとんど本来の戦闘力を発揮することができず、その一方で赤師団の主力はその戦闘力を一方的に発揮することが可能である。

4.もし赤師団が青師団との戦闘を可能な限り避けて戦力を温存するように命令されている状況であれば別だが、そのような状況は想定で示されていない。赤師団は青師団の攻撃を戦闘によって撃滅することが可能な勢力を有している。河川という防勢作戦に適した地形を放棄して退却することで、赤師団の主力の人的損害が軽微であったとしても、青師団の主力に損害を与えることができず、かつ青師団の攻勢作戦を成功させる間違いを犯している。

ちなみに、師団というのは陸軍の最も基本的な単位の部隊で、その規模は時代や地域により異なりますが、おおむね1万名から1万8000名程度で組織される戦闘部隊のことです。

KT

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